データモデル2023年のトレンド

データモデルにトレンドなどあるのかと思われるかも知れませんが、時代と共に矛先や求められるものが変わってきています。私が本年度注目しているというか、普及するであろうと考えるのは次の7点です。

1.SoRからSoE領域へとデータモデルスコープが拡大する

今までデータモデルというと、SoR(System of Record)といわれる企業の活動結果を記録するシステム領域、いわゆる基幹システムでのデータ構造を整理すると言うことが中心だったかと思います。一方、顧客満足度や顧客体験価値向上のためにSoE(System of Engagement)が重要となってきています。SoEは単なるポータル、Webシステムとしてデータモデリング上は軽視されてきた経緯がありますが、SoRのデータがあって初めてSoEがある、逆にSoEがデータ発生源となってSoRに蓄積されるというように、切り離しては考えられなくなって来ているのです。

2.ビジネス創造のためのデータモデル

DXは、既存ビジネスを改善することではありません。新たなビジネスの構築が求められています。そのためには、ASISのデータモデルを再編し、エンティティの統廃合、利レションシップの見直し、新たなエンティティを追加し、新ビジネスモデルの骨組みを作成していくことが求められます。もはや、最適なデータベース、データウェアハウス構築のためのデータモデルに止まらず、新たなビジネス創出を支援するものと成っていくでしょう。

3.真のデータを探索するためにデータリネージで必要となる 

ビッグデータといわれて久しく、世の中はデータに溢れています。そして、それらのデータを基に、AIが新たなデータを生成し、雪だるま式にデータは増加しています。これらは、加工、集約された派生データです。

こうした派生データに惑わされないようにするためには、データが何処で加工され、そして源泉は何処なのかのルーツを探ることが求められます。そのためのツールとしてデータモデルがあるのです。データモデルだけでは無理で、データフローを併せて描くことで真のデータにたどることができるのです。

4.ローコード・ノーコードツール適用のためのデータモデル

DX実現の為には、ユーザ自身でアプリケーションを構築すべきとの考えが多くなってきています。ITに不慣れな人がシステムを構築するために、ローコード・ノーコードツールが隆盛しています。プロセス主導のもの、データ主導のものなど分類分けできますが、例えば、TALONというツールではデータモデルさえできれば、後はSQLだけでシステムが完成します。そのためには、ユーザ自身で適用可能なデータモデルの作成が求められます。

5.ビジネスユーザのツールとしてデータモデルが使われる

今までデータモデルというと、ITエンジニア、とりわけデータベース技術者が作成するものと捉えられることが多かったように思います。項番2の「ビジネス創造のためにデータモデルが必要」で述べたように、DXを推進するビジネスユーザ自身でデータモデルを作成していくことが求められるようになります。当然、実装を前提としたモデルではなく、概念データモデルということです。

今後、データモデリングはITエンジニアからビジネスユーザの誰もが備えるべきスキルになって行くだろうと考えます。JUASの研究チームが「-データ経営が日本を変える」としてDOBA(データ中心ビジネス・アプローチ)を提唱しています。従来のITシステム構築の方法論であるDOAをビジネスの世界に適用しようという考え方です。

https://juas.or.jp/cms/media/2022/04/data_management.pdf

6.デジタルツイン実現のために必須となる

リアルのビジネス活動結果のデータをIoTなどで収集し、サイバー空間で最適解を見いだそうというデジタルツインの検討が盛んに行われています。

原料の調達から製造、製品出荷、流通に至る最適なサプライチェーンの構築をサイバー空間で行おうという際には、リアルビジネスでのビジネスプロセスだけで無く、データモデルが必須となります。SCM全体についてのASISのデータモデルからTOBEのデータモデルを作ることになります。

7.外部データとの連携、企業統合に備える

項番3で、溢れているデータから「真のデータを探せ!」といいましたが、オープンデータやデータバンクなどから提供されるデータは、増え続けています。そして、企業内に蓄積したデータとの接続がいつ必要となるかわかりません。M&A、企業間連携も益々増えてくることでしょう。それらとの連携をスムースに進めるためには、企業内のデータの見える化、即ち、データモデルやデータカタログの整備を日々怠ってはならないということを最後にあげておきます。

 

以上

年頭挨拶振り返り

2023年の年頭所感に代えて、過去10年間の年頭挨拶文面を自己分析してみた。

これからも、ビジネスとデータモデルに関心が向いていることがわかる。今年も、データモデルがビジネスにどのように貢献できるのかを追求していきたい。