事業の本質をあきらかにするデータモデリングとは

2023年3月9日に、JDMCの年中行事となっている「データタマネジメント2023」でデータモデリングのチュートリアルセッションを行いました。

タイトルは「膨大かつ多様なデータの関係を解き明かし、事業の本質を明らかにするデータモデリングとは」です。

■概要は以下の通りです。

◆SNSのデータ、カメラ画像や音声データ、各種センサー類が生成するIoTデータ、衛星データ・・・。データの量や種類は増加の一途を辿っています。こうした雪だるま式に膨れ上がる様々なデータを収集、AIなどで分析するだけで、果たしてビジネスを推進し顧客体験価値を高められるのでしょうか?答はNoです。生産や購買、在庫、販売といったビジネス活動に伴い発生するデータとの関係が不可欠だからです。

◆この点で、企業はビジネス活動のコアとなる源泉のデータを認識し、構造を明らかにすることから始めるべきで、それに欠かせないテクニックの一つがデータモデリングです。よく話題になるデジタルツインを実装する際にも不可欠です。そこで本講演では、今こそデータモデリングが必要な理由、データモデリングの本質、データモデリングに関する知識やノウハウについて解説します。

以下の構成となっています。

1.(溢れるデータ)雪だるま式に膨れ上がるデータの実態

2.(どうするモデラー?)派生データの核となる源泉データを見極める

3.(データモデルとは)事業の本質を明らかにするデータモデリングとは

4.(データモデルとは)データモデリング作法

5.(活用シーン)データモデルが必要とされる局面・事例

6.まとめ

データは大量に溢れているが、その源泉を明らかにし、その構造を見極めておくことが新たなビジネスを創出する上でも重要で、そのための技術がデータモデリングである。

グローバルサプライチェーンをはじめとして、社外とのデータ連携・共有が必須となっており、そのためには、サイロ状態となっている社内データの現状を知るためにデータモデリングを行い、データ連携の基盤を用意することが求められる。

といったことをお伝えしています。

参加申込した方は、オンデマンドで視聴することがきます。

当社HPライブラリより講演資料の入手が可能です。

 

 

アーキテクチャチーム活動事例

ITIフォーラム2023(2.14開催)での、アーキテクチャ策定のユーザ事例発表についてコメントします。

アーキテクチャ統括チームの役割と活動状況についての報告であった。
現状のアーキテクチャを概念データモデル、システム鳥観図(論理データフロー)、システム連関図(物理システムとのマッピング)の3点セットで作成し、データが散財している課題を明確にし、データHUBを目的別に構築していった(一部サービスイン、一部開発中)。

データHUBとDWHの分離、疎結合アーキなど中山さんの書籍に感銘し、数回のレクチャーを受けられた。
アーキテクチャ統括チームを編成し、現状の課題を可視化することについて、「取り締まりの警察」ではなく、「かかりつけ医」を目指したというところが印象的であった。かかりつけ医になるとしても、患者の症状を記したカルテがないので、概念モデルからなる全体マップを作成していったという。
さらに、システム主管部からの協力を得るために、アーキテクチャが経営の意思に基づいたものであることを理解してもらいながら進めた。
主管部の協力、理解が得られやすいように、概念モデルも超々概念、超概念、概念の3ステップで作成した。最後の概念モデルでキーや属性が定義されているようだ。
アーキ統括チームのメンバは、各主管システムの現場で全体を俯瞰してみるのが得意な人を選定した。
明らかになった課題は、事前にコンサルから提示されていたものではあったが、自身でアーキ図を作成することによって、自分事としてとらえることができた。

全社アーキというとどうしても統制の色彩が出がちで、周りから警戒されがちであるが、逆に相談を持ちかけられるような「かかりつけ医」を目指したというヒューマンな面での工夫。同時に、概念モデルを作成するのにあたって、主管部に受け入れてもらい易いように、超々概念からの3ステップに分けて進めるというテクニカル面での創意が成功要因であったと考える。

データモデル2023年のトレンド

データモデルにトレンドなどあるのかと思われるかも知れませんが、時代と共に矛先や求められるものが変わってきています。私が本年度注目しているというか、普及するであろうと考えるのは次の7点です。

1.SoRからSoE領域へとデータモデルスコープが拡大する

今までデータモデルというと、SoR(System of Record)といわれる企業の活動結果を記録するシステム領域、いわゆる基幹システムでのデータ構造を整理すると言うことが中心だったかと思います。一方、顧客満足度や顧客体験価値向上のためにSoE(System of Engagement)が重要となってきています。SoEは単なるポータル、Webシステムとしてデータモデリング上は軽視されてきた経緯がありますが、SoRのデータがあって初めてSoEがある、逆にSoEがデータ発生源となってSoRに蓄積されるというように、切り離しては考えられなくなって来ているのです。

2.ビジネス創造のためのデータモデル

DXは、既存ビジネスを改善することではありません。新たなビジネスの構築が求められています。そのためには、ASISのデータモデルを再編し、エンティティの統廃合、利レションシップの見直し、新たなエンティティを追加し、新ビジネスモデルの骨組みを作成していくことが求められます。もはや、最適なデータベース、データウェアハウス構築のためのデータモデルに止まらず、新たなビジネス創出を支援するものと成っていくでしょう。

3.真のデータを探索するためにデータリネージで必要となる 

ビッグデータといわれて久しく、世の中はデータに溢れています。そして、それらのデータを基に、AIが新たなデータを生成し、雪だるま式にデータは増加しています。これらは、加工、集約された派生データです。

こうした派生データに惑わされないようにするためには、データが何処で加工され、そして源泉は何処なのかのルーツを探ることが求められます。そのためのツールとしてデータモデルがあるのです。データモデルだけでは無理で、データフローを併せて描くことで真のデータにたどることができるのです。

4.ローコード・ノーコードツール適用のためのデータモデル

DX実現の為には、ユーザ自身でアプリケーションを構築すべきとの考えが多くなってきています。ITに不慣れな人がシステムを構築するために、ローコード・ノーコードツールが隆盛しています。プロセス主導のもの、データ主導のものなど分類分けできますが、例えば、TALONというツールではデータモデルさえできれば、後はSQLだけでシステムが完成します。そのためには、ユーザ自身で適用可能なデータモデルの作成が求められます。

5.ビジネスユーザのツールとしてデータモデルが使われる

今までデータモデルというと、ITエンジニア、とりわけデータベース技術者が作成するものと捉えられることが多かったように思います。項番2の「ビジネス創造のためにデータモデルが必要」で述べたように、DXを推進するビジネスユーザ自身でデータモデルを作成していくことが求められるようになります。当然、実装を前提としたモデルではなく、概念データモデルということです。

今後、データモデリングはITエンジニアからビジネスユーザの誰もが備えるべきスキルになって行くだろうと考えます。JUASの研究チームが「-データ経営が日本を変える」としてDOBA(データ中心ビジネス・アプローチ)を提唱しています。従来のITシステム構築の方法論であるDOAをビジネスの世界に適用しようという考え方です。

https://juas.or.jp/cms/media/2022/04/data_management.pdf

6.デジタルツイン実現のために必須となる

リアルのビジネス活動結果のデータをIoTなどで収集し、サイバー空間で最適解を見いだそうというデジタルツインの検討が盛んに行われています。

原料の調達から製造、製品出荷、流通に至る最適なサプライチェーンの構築をサイバー空間で行おうという際には、リアルビジネスでのビジネスプロセスだけで無く、データモデルが必須となります。SCM全体についてのASISのデータモデルからTOBEのデータモデルを作ることになります。

7.外部データとの連携、企業統合に備える

項番3で、溢れているデータから「真のデータを探せ!」といいましたが、オープンデータやデータバンクなどから提供されるデータは、増え続けています。そして、企業内に蓄積したデータとの接続がいつ必要となるかわかりません。M&A、企業間連携も益々増えてくることでしょう。それらとの連携をスムースに進めるためには、企業内のデータの見える化、即ち、データモデルやデータカタログの整備を日々怠ってはならないということを最後にあげておきます。

 

以上

年頭挨拶振り返り

2023年の年頭所感に代えて、過去10年間の年頭挨拶文面を自己分析してみた。

これからも、ビジネスとデータモデルに関心が向いていることがわかる。今年も、データモデルがビジネスにどのように貢献できるのかを追求していきたい。

ビジネス推進のためのデータモデリング入門

最近、ビジネス視点からのデータモデル活用に興味がある。経営者・企画担当者に対して既存のデータからどんな情報を提供できるか、また、経営層が欲しいデータはどんなデータモデルを作れば提供できるのかといったことを考えるのが楽しいのだ。
データは企業の礎であるから、そこに蓄積された欠片を組み合わせて新しい視点、分析軸などを生み出せるはずだ。その辺はデータサイエンティストの仕事ではあるのだが、彼らが正しく扱えるようにデータを整える、いわゆる「データの前捌き」の重要性はさらに高まっている。

前捌きとは、端的に言ってしまえば、データ品質の担保、コード体系の統一化であろうか。
もちろん、データ品質を担保するには、データそのものの発生からアーカイブ化までの一生を監視する体制や、データの重複や不正コピー、混入の有無をチェックするシステムなど、恐ろしい量の作業が必要だろう。しかもこの作業を、現行システムの稼働状況を損なわずに実行していかなければならない。…なんと気が遠くなることか。

ビジネスユーザにもデータモデリングを!

データモデルというとIT技術者向けのものと思っていませんか。一頃はモデラーとも言われましたが、最近は、データアーキテクトと呼ばれることが多いかも知れません。
ITに直接関わらないビジネスユーザにとって、今までデータモデルとは無縁のモノだったのではないでしょうか。そもそもデータモデルとう言葉自身知らなかったという方がほとんどでしょう。
そもそも、ITそのものが、一般ビジネスユーザ、否、ビジネスにかかわらず、一般化してきているなかで、ITに関わらないビジネスユーザなんてあり得ませんよね。

AI、データ活用といわれていますが、。。。